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一重の目を大きく見せたくて、アイラインを太くしすぎた私のメイクやり直し記録

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一重のまま今日はご機嫌

土曜日の朝、洗面台に置いたコーヒーが冷めるまで、私は右目のアイラインを太くしていた。

目を閉じると、それなりにきれい。目を開けると、さっき描いた線が見当たらない。

もう少し。あと少し。

そうして出来上がったのは、目を大きく見せたいという願いより、黒いペンの働きぶりが伝わるまぶただった。

「今日は友達とランチなんだけどな」

鏡の前でつぶやく。待ち合わせまで、あと一時間。片方の目だけ、ずいぶん意気込んでいる。

一重の目元は嫌いじゃない。切れ長に見える角度も、笑ったときに目尻がやわらかくなるところも、ちゃんと好きだ。

それでも、写真を撮る予定がある朝には、もう少しぱっちり見せたいと思う。すっぴんの私を否定したいわけではなくて、今日の服に似合う、少し華やかな目元で出かけたい。

そのくらいの願いだったはずなのに、メイクを始めると、とたんに加減がわからなくなる。

可愛くなりたい。でも、頑張ったことはあまり知られたくない。

このひそかな見栄が、私のアイラインを少しずつ太らせていた。

目次

目を大きくしたかった朝、私の焦りまで見えていた

消えたアイラインを、追いかけすぎた

私がメイク動画を保存するのは、たいてい夜だ。

布団に片足を入れた状態で、画面の向こうの手際のよさを眺める。ブラシが二往復して、まぶたにきれいな陰影が生まれる。その軽やかさを見ると、明日の私にもできそうな気がしてくる。

ところが翌朝、同じような色をのせても、見え方が違う。

目を開けると色が隠れたり、思ったより広く茶色が見えたりする。そこで私は、自分の目の形を確かめる前に、量を足してしまっていた。

動画の人に近づかないのは、まだ足りないから。そう思って。

でも、一重とひとことで言っても、まぶたの厚みも、目尻の形も、まつ毛の生え方も違う。同じ幅に塗れば同じ仕上がりになる、という話ではなかった。

この朝の失敗も、それだった。閉じた目に描いた線を、開けた目でも全部見せようとして、ひたすら上へ広げていたのだ。

一度、ペンを置く。

眉を上げず、目を見開かず、普段の顔で鏡を見る。会話をするときも、道を歩くときも、私はずっと驚いた顔をしているわけではない。いつもの開き方で仕上がりを確かめるほうが、今日の私には必要だった。

一重のアイラインは、目を開いた状態で、どこに描けば見えるかを確認することがポイントだと、資生堂のメイク解説でも紹介されている。shiseido.co.jp

私はまず、目尻に細い線が見えるくらいから始め直すことにした。隠れている場所すべてを黒くするのではなく、見えるところに少しずつ置いてみる。

太くなった部分は、使っている化粧品に合うリムーバーで、こすらず少しずつ落とした。乾いた綿棒で何度も往復すると、私のまぶたはすぐ機嫌を悪くする。急いでいる朝ほど、ここはゆっくり。

落とした部分を整えながら、少し恥ずかしくなった。

私は「自然に見せたい」と言いながら、自然に見えるかどうかを、ほとんど確かめていなかったのだから。

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「似合う」を聞くと、少しだけ力が抜ける

飲食と美容の仕事を合わせて、約十年。接客をしていた頃、今も覚えている表情がある。

美容の現場で、落ち着いた色を選んだお客様に、同僚が「今日のお洋服にも合いますね」と声をかけた。お客様は、さっきまで少し寄せていた眉をほどいて、もう一度ご自分の顔を見た。

派手な変化ではなかった。けれど、帰り際の声が、来たときよりほんの少し明るかった。

きれいになったかどうかを採点されるより、自分の選んだものが自分になじんでいると言われるほうが、ほっとする日がある。

私もそうだったはずなのに、自分の顔には、ずいぶん厳しい採点表を使っていた。

目はもっと大きく。まつ毛はもっと長く。でも厚化粧には見えないように。

注文が多い。しかも担当者は、まだコーヒーを一口しか飲んでいない私だ。

仕事をしていた頃、「人をきれいにするには、まず自分の心が整っていること」が大事だと感じる場面は多かった。焦っていると、相手の言葉を最後まで聞けない。自分がよいと思ったものを、つい急いで勧めたくなる。

それは、自分の顔に向き合うときも似ている気がする。

まぶたの形を見る前に、「足りない」と決めていた。気分を聞く前に、「もっと」と命令していた。

私は作家を目指して、ふだんは言葉を選ぶ時間を大切にしている。それなのに、自分にかける言葉だけは、どうしてこんなに雑になるのだろう。

今日の目元をどうしたいか、いったん言い直してみた。

友達と笑って、ごはんを食べて、写真を一枚撮る。そのとき、目元に少し明るさがあればうれしい。

他の誰かの目になることまで、今日の予定には入っていない。

そう考えると、ポーチの中から出すものも決めやすくなった。手持ちの淡いベージュ、やわらかいブラウン、細く描けるライナー、いつものマスカラ。

新しい道具を買う前に、この四つで置く場所を変えてみる。うまくいかなければ、また直せる。今日は、そのくらいの気楽さを持ち込みたかった。


小さなブラシで、今日の私を描き直す

ここからは、その朝に私が試す順番を、手元のメモのように残しておく。

狙うのは、一重のすっきりした雰囲気を残しながら、色の陰影とまつ毛で目元の存在感を出すこと。目そのものの大きさが変わるわけではなく、メイクによる見え方の工夫だ。

① まず、まぶたの上を落ち着かせる。

スキンケアがなじんでから、表面に余った油分をティッシュで軽く押さえる。乾燥するほど拭き取らず、触ったときのべたつきを少し整える程度にした。

手持ちにアイシャドウベースがあれば、製品の使い方に沿って薄く。なくても、このためだけに慌てて買い足さず、いつものシャドウを少量ずつ重ねてみる。

最初からたくさんのせると、あとで引くのが難しい。料理の塩と同じで、私はここでも少しずつを忘れがちだった。

② 明るい色を薄く広げ、ブラウンの見える幅を探す。

淡いベージュを上まぶたに薄くのせる。眉のすぐ下まで同じ濃さで塗らず、目元になじむくらいの控えめな量から。

次に、中間色のブラウンを、まつ毛の生え際に近い皮膚から少しずつ上へぼかしていく。眼球や粘膜にはのせない。

途中で目を開け、普段の表情で色がどれくらい見えるか確かめる。私なら、まずは開けたときにブラウンが少しのぞく程度。見えにくいからと一気に広げず、足しては離れて見る。

色の境目は、何もついていないブラシで軽くぼかす。濃い色の帯を作るより、肌へふわっとつながるほうが、この日のやわらかいブラウスには合っていた。

ピンクが好きなら、無理に封印しなくていい。薄く使って目尻にブラウンを添えるなど、まずは量や置く場所を変えてみる。一重だから似合わない色、と決めると、せっかくのメイクが急に窮屈になる。

③ アイラインは、見える目尻から少しずつ。

正面を見て、目尻の位置を確認する。そこから目の形の流れに沿って、短い線を描く。最初は一〜二ミリほどを試し、横にも正面にも顔を向けて長さを調整する。

これは固定の正解ではなく、描きすぎを防ぐための私の出発点だ。

上まぶた全体に線を足すなら、まつ毛の生え際に沿う皮膚側へ細く。粘膜まで埋めたり、隠れる場所を無理に太くしたりしない。

黒でくっきりさせる日があってもいいし、濃いブラウンでやわらかく見せる日があってもいい。今回は、アイシャドウとなじみやすいブラウンを選んだ。

描いた直後だけでなく、数回まばたきしてからも確認する。下まぶたに移っていないかを見るだけで、出かける前の安心が少し増えた。

④ 下まぶたは、全部を囲む前に立ち止まる。

私は目を大きく見せたい日に限って、上下とも濃い線で囲みたくなる。でも、濃い輪郭が強すぎると、狙っていたやわらかさから離れることがある。

この日は、下まぶたの目尻側三分の一ほどに、淡いブラウンを細くぼかした。まずはこのくらいから、全体のバランスを見てみる。

明るさを足したければ、下まぶたの中央の皮膚に、細かなパールをほんの少し。目の中に入らない位置に、控えめにのせる。

涙袋の影は、描かなくてもいい。慣れないうちは線だけが目立つこともあるから、今日は光を少し足すだけにした。できる工程が増えることと、全部やることは別だった。

⑤ まつ毛は、長さを盛る前に向きを整える。

ビューラーは、まぶたを挟んでいないか確かめてから、軽い力で使う。根元だけを強く折り曲げず、少しずつ位置を変えながら自然なカーブを目指す。引っ張らず、痛みがあればやめる。

まぶたの形や道具のカーブによって、使いやすさは違う。うまく上がらないからと、力だけを増やすのはやめておいた。

マスカラは、ブラシについた余分な液を容器の口で調整し、薄く一度。束が大きくなりすぎないように、毛先まで軽くとかすつもりで塗る。

縦の印象を少し強めたい私は、中央のまつ毛を丁寧に整えた。下まつ毛は、塗りにくければ省いてもいい。一本ずつ完璧に仕上げようとして遅刻するより、気持ちよく玄関を出たかった。

最後に、鏡から少し離れる。

至近距離では気になった左右差が、顔全体で見るとそれほど目立たない。反対に、近くでは平気だった色が少し濃く見えることもある。できれば窓辺の自然光でも一度確認して、そこで手を止める。

今日の私には、描き足す技術と同じくらい、終わりにする勇気が必要だった。

写真の中で、私はちゃんと笑っていた

待ち合わせの店では、焼いたパンの香りがしていた。

友達が窓際の席から手を振る。私は席に着き、メニューを開いて、ようやく朝から張っていた肩の力を抜いた。

メイクを変えたことを、友達は特に口にしなかった。

正直に言えば、少しだけ期待していた。「今日、なんか違うね」と気づいてもらえたらうれしい。その気持ちまで、きれいに消えたわけではない。

でも、食後に二人で写真を撮ったとき、いつもの拡大確認をする前に、自分の表情に目が留まった。

私、ちゃんと楽しそうだった。

目は一重のまま。左右がまったく同じでもない。それでも、目尻のブラウンとまつ毛が、私の顔の中で無理なく収まっている気がした。

「これ、送って」

自分からそう言えたのが、その日のいちばん小さくて、いちばんうれしい変化だった。

もちろん、次も同じように仕上がるとは限らない。寝不足の朝もあるし、まぶたの調子が違う日もある。昨日似合った色が、今日の服にはしっくりこないことだってあるだろう。

だから私は、うまくいった色と塗る範囲を、短くメモしておこうと思った。毎回ゼロから反省会を開くより、自分に似合った日の記録を一つずつ増やしたい。

忙しい朝なら、五つの工程を全部やらなくてもいい。淡いシャドウと短い目尻のラインだけの日。まつ毛を整えるだけの日。その日の時間と気分で選べるほうが、私には続けやすい。

なお、目元に赤みやかゆみ、痛みがある日は、メイクを休む。道具は清潔にして、夜は使った化粧品に合う方法でやさしく落とす。ぱっちり見せたい気持ちのために、目元の不調を我慢することは予定に入れたくない。

「劇的大変身」という言葉を見ると、私はつい、誰かが振り向くほど変わらなくてはと思ってしまう。

でも、今日うれしかったのは、自分の写真をすぐに閉じなかったことだった。私にとっては、それもちゃんと変化なのだと思う。

あなたなら、明日の目元にどんな気分をひとさじ足したいですか。

帰宅して、朝のまま洗面台に残していたカップを見つけた。底には、冷めきったコーヒーが少しだけある。

カップを持ち上げたついでに、鏡をのぞく。朝ほど整ってはいないけれど、目尻にはまだ薄くブラウンが残っていた。

もっと上手には、なりたい。

ただ、明日の私は、今日より早くペンを置けるかもしれない。そんなことを思いながら、カップを洗うために蛇口をひねった。



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