パクチーを好きになりたいわけじゃない。ただ、歳を重ねるほど気になってしまう

朝から雨が降りそうで降らない曇り空だった。
洗濯物を外に出そうか迷ったままコーヒーだけ淹れて、スマホを片手にぼんやりニュースやレシピサイトを眺めていたら、「パクチーは美肌と若返りをサポートするハーブ」という文字が目に入った。
パクチー。
好きな人は熱狂的に好きなのに、苦手な人は本当に苦手なあの葉っぱ。
実は私は後者だ。
嫌いとまでは言わないけれど、積極的に食べたいと思ったことはない。
むしろ外食で入っていたら少し脇によけるタイプだった。
だけど三十代になってから、不思議なことに「好きか嫌いか」だけで食べ物を選ばなくなった気がする。
美味しいかどうかより先に、「これ体に良いんだっけ」という考えが頭をよぎる。
若い頃にはなかった変化だ。
今日はそんな小さな違和感について書いてみたい。
パクチーの栄養を知った朝
調べてみると、パクチーは想像以上に栄養価の高い植物だった。
特に目を引いたのはβカロテン。
体内でビタミンAに変わり、皮膚や粘膜の健康維持を助ける栄養素として知られている。
さらにビタミンCやビタミンEも含まれていて、いわゆる抗酸化作用が期待される成分も豊富らしい。
鉄分やカリウム、カルシウムなどのミネラルも含まれている。
「若返りのハーブ」と呼ばれるのは少し大げさかもしれないけれど、体を酸化ストレスから守る働きが期待されていることを考えると、そう呼びたくなる人がいるのも分かる気がした。
そして特徴的な香りにはリナロールなどの精油成分が含まれていて、リラックス効果が期待できるとも言われている。
昔の私だったらここで読み終わっていたと思う。
へえ、すごいね。
それで終わり。
だけど最近は違う。
記事を閉じたあとも頭のどこかに引っかかる。
食べた方がいいのかな。
でも好きじゃないんだよな。
そんなことを考えている自分がいる。
「好き」より「必要」が先に来る年齢
二十代の頃は食事がもっと単純だった。
好きなものを食べる。
それだけだった。
お昼にパスタを食べて、夜にポテトを食べて、寝る前にアイスを食べても特に罪悪感なんてなかった。
もちろん体重は気になったけれど、それは見た目の問題だった気がする。
今は違う。
疲れやすさ。
寝起きの重さ。
夕方になると感じる体力の低下。
そういうものが少しずつ積み重なって、「体に何を入れるか」が無視できなくなってきた。
だけど正直に言うと、それが少し寂しい。
好きなものを好きなだけ選んでいた頃の自由さを、ときどき思い出す。
パクチーの記事を読みながら浮かんだのも、そんな感情だった。
食べたいからじゃない。
体に良いらしいから気になっている。
その事実に少しだけ複雑な気持ちになった。
誰にも言わない本音だけれど、健康を気にする自分を見るたびに、「ちゃんと歳を取っているんだな」と感じることがある。
スーパーで起きた小さな出来事
昼過ぎ、買い物に出た。
特に目的はなかったけれど、夕飯の材料を買うために近所のスーパーへ向かった。
野菜売り場を歩いていると、偶然パクチーが並んでいた。
ほんの数時間前まで気にも留めなかったはずなのに、その日は足が止まった。
パックを手に取ってみる。
鮮やかな緑色。
独特の香り。
そして値札。
思ったより高い。
私はその場でしばらく固まってしまった。
食べたいわけではない。
でも体に良いらしい。
買うべきなのだろうか。
そんなことを真剣に考えている自分がおかしくて、少し笑ってしまった。
結局、その日は買わなかった。
代わりに小松菜を買った。
なんだか現実的な選択だった。
でも帰り道に考えた。
私はパクチーを買わなかったのではなく、パクチーと向き合う覚悟がなかったのかもしれない。
大げさだけれど、そんな気分だった。
「体に良いもの」が増えるほど、選ぶことは難しくなる
三十代になると情報が増える。
健康情報。
栄養情報。
老化対策。
睡眠。
腸活。
ストレスケア。
毎日のように新しい知識が流れてくる。
知識が増えるのは良いことだ。
だけどその一方で、「何を選ぶか」がどんどん難しくなっていく。
昔は食べたいものを選んでいた。
今は正解を探していることがある。
その違いは思った以上に大きい。
パクチーひとつとってもそうだ。
栄養価を知る前と知った後では見え方が変わる。
単なる苦手な葉っぱではなくなる。
体に良いらしい葉っぱになる。
そして、その変化が少しだけ面倒くさい。
だけど面倒くさいと思う反面、嫌いではない。
なぜなら、それは自分の体を気にするようになった証拠でもあるからだ。
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きっと同世代の女性なら共感してくれる人もいると思う。
昔は絶対に興味がなかった健康番組を最後まで見てしまうこと。
スーパーで野菜の栄養表示を読んでしまうこと。
食べ物を選ぶ基準が少しずつ変わっていること。
あれは老化というより、自分の体との付き合い方が変わっただけなのかもしれない。
わかる……気づいたら健康情報を保存していて、自分でも少し笑ってしまう。
そんな瞬間がある。
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結局、私は今日もパクチーを食べなかった。
だけど以前の私と違うのは、食べなかったことに意味があったことだ。
好きでもないのに無理して食べる必要はない。
でも知ることは無駄じゃない。
パクチーに含まれる栄養や効能を調べたことで、自分が今どんなことを気にしているのかが見えた。
若返りたいわけじゃない。
昔に戻りたいわけでもない。
ただ、できるだけ機嫌よく歳を重ねたい。
そのために何を食べて、何を選び、どんな毎日を送るか。
最近はそんなことを考える時間が少し増えた。
パクチーは買わなかったけれど、その代わりに自分の変化をひとつ見つけた気がする。
もし今度スーパーで見かけたら、今度こそ買うかもしれない。
あるいはまた素通りするかもしれない。
どちらになるかは分からない。
でも、その迷い自体が今の私らしい気がしている。
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